第1章 T-8でできること
Roland T-8は、リズム・マシンとベース・シーケンサーをひとつにまとめた小型のグルーヴ制作機です。公式マニュアル上の仕様では、リズム・インスト6パートとベース1パートを持ち、最大32ステップのシーケンスを組めます。ユーザー・パターンは64個あり、リズムとベースのパターンはセットで呼び出されます。
このサイトでは、T-8を「短いループを作り、手で変化させ、外部機器やDAWと同期させる機材」として扱います。これは公式マニュアルの構成から見た本サイト側の整理です。
1台の中にある7つの音源パート
T-8のリズム側には、バス・ドラム、スネア・ドラム、ハンド・クラップ、タム、クローズド・ハイハット、オープン・ハイハットの6インストがあります。各インストはステップ・ボタンで打ち込み、レベルやチューン、ディケイなどで音を整えます。
ベース側は、リズムとは別のベース・パートとして扱います。ベースにはレベル、ピッチ、ディケイ、カットオフ、レゾナンス、ENV MODのつまみがあり、パターンの土台になる低音フレーズを作れます。ベース波形はメニューから選べるため、鋭いフレーズにも、少し丸いラインにも寄せられます。
| パート | 主な役割 | まず触る操作 |
|---|---|---|
| BASS DRUM | 拍の重心、キック | BASS DRUMを選び、ステップを点灯 |
| SNARE DRUM | 2拍目、4拍目の芯 | SNARE DRUMを選び、ステップを点灯 |
| HAND CLAP | スネアの補強、派手さ | HAND CLAPを選び、ステップを点灯 |
| TOM | フィルや低めの装飾 | TOMを選び、ステップを点灯 |
| CLOSED HIHAT | 細かい刻み | CLOSED HIHATを選び、ステップを点灯 |
| OPEN HIHAT | 抜けや展開 | OPEN HIHATを選び、ステップを点灯 |
| BASS | 低音フレーズ | BASSまたはKYBDで入力 |
32ステップでパターンを作る
T-8のシーケンサーは、1パターンあたり最大32ステップです。本体には16個のステップ・ボタンがあるため、1〜16と17〜32の2ページに分けて表示します。最初は16ステップだけで十分です。慣れてきたら32ステップに広げると、同じ1小節ループから抜け出しやすくなります。
パターンは4バンク×16個の合計64個です。PATTERNを押すとパターン選択モードになり、ステップ・ボタンがパターン番号として働きます。バンクを切り替えるときは、PATTERNを押しながら左端のステップ1〜4を使います。
変化を作るためのシーケンサー機能
T-8の面白さは、ただステップを点灯させるだけで終わらないところにあります。リズム側では、アクセント、ベロシティー、プロバビリティー、サブ・ステップを使えます。
アクセントは、指定したステップを強く鳴らす機能です。リズム側のアクセントはリズム・インスト全体にかかります。ベロシティーはインストごとのステップに細かい強弱を付けるために使います。
プロバビリティーは、ノートを再生する確率です。たとえば、ハイハットの一部を毎回鳴らさず、70%くらいの確率で鳴らすようにすると、同じパターンでも少しずつ表情が変わります。サブ・ステップは1ステップ内に連打やフラムを入れる機能で、細かいハットやスネアの装飾に向いています。
ベース側では、ノート、アクセント、スライド、タイをステップごとに入力できます。スライドは次のノートへ滑らかにつなぐための設定で、タイは前の音を引き継いで伸ばすために使います。
ライブ中に動かせる機能
T-8は、停止して作り込むだけでなく、再生しながら変化を作る操作も多く用意されています。パターン切り替えは予約式なので、演奏中に次のパターンを選んでも、流れに合わせて切り替えられます。
さらに、ステップ・ループで特定のステップだけを繰り返したり、フィルインをパターン終わりに差し込んだり、リズムやベースをランダム生成したりできます。ミュートも重要です。SHIFTを押しながらインスト・ボタンを押すことで、メニューを開かずにインストのミュートを切り替えられます。
ライブ向きの操作をまとめると、次のようになります。
| 目的 | 使う機能 |
|---|---|
| 次の展開に移る | パターン切り替え、バンク切り替え |
| 一瞬だけ盛り上げる | フィルイン、ステップ・ループ |
| 抜き差しする | インスト・ミュート |
| 予測できない変化を足す | プロバビリティー、ランダム生成 |
| 跳ね方を変える | シャッフル、ステップ・スケール |
エフェクトで奥行きと圧力を作る
T-8には、ディレイ、リバーブ、オーバードライブ、サイドチェインがあります。ディレイとリバーブは本体つまみで全体量を調整し、インストごとのセンド量も設定できます。ディレイ・タイムはテンポ同期にできるため、8分や付点8分のような音楽的な単位で扱えます。
オーバードライブは、インストごとにオン/オフを設定し、全体のドライブ量を調整します。サイドチェインは、リズム・インストをトリガーにして、ベースやエフェクト、USB入力などをダッキングまたはゲート的に動かせます。キックに合わせてベースを沈ませるような動きは、T-8単体でも作れます。
外部機器とつながる
T-8はUSB Type-CでパソコンやiOS機器に接続し、USBオーディオとUSB MIDIを扱えます。公式マニュアルでは、USB Audio Device Class 2.0対応のため、パソコンやモバイル機器への専用ドライバーのインストールは不要とされています。ただし、充電専用ケーブルではデータ通信できません。
リア・パネルにはMIDI IN/OUT端子もあり、TRS-MIDI系のケーブルを使って外部MIDI機器と同期できます。トップ側にはSYNC IN/OUTもあり、対応する機器とクロックをやり取りできます。SYNC INに信号が入っている場合は、MIDI Clock Syncの設定に関係なくSYNC INのクロックに同期します。
まず覚える順番
最初から全機能を覚える必要はありません。まずは次の順番で触ると、T-8の全体像がつかみやすくなります。
- パターンを選び、テンポを決める
- バス・ドラム、スネア、ハイハットを打ち込む
- ベースを入れる
- 音量、チューン、ディケイ、カットオフを調整する
- ディレイとリバーブを少し足す
- パターンを保存する
- ミュート、フィル、プロバビリティーで変化を付ける
次の章では、この流れに沿って実際に最初の1パターンを作ります。