第4章 シンセ音作りの基本
S-1の音作りは、OSCILLATORで素材を作り、FILTERで明るさを整え、ENV/AMPで鳴り方を決め、LFOで揺れを足す流れで考えるとわかりやすくなります。
この章では、つまみを1つずつ動かしながら、ベース、リード、パッド風の音を作るための基本を整理します。
OSCILLATORで音の素材を作る
OSCILLATORは、音の原波形を作る場所です。S-1では、矩形波、のこぎり波、サブ・オシレーター、ノイズを混ぜて音の素材を作ります。
| 操作子 | 変わること | 最初の使い方 |
|---|---|---|
RANGE | オシレーターのオクターブ | ベースなら低く、リードなら中域へ |
| 矩形波レベル | 矩形波またはOSC DRAW波形の音量 | 太く、丸い成分を足す |
| のこぎり波レベル | のこぎり波の音量 | 明るく、前に出る成分を足す |
SUB | サブ・オシレーターの音量 | ベースの低域を補強 |
NOISE | ノイズの音量 | 効果音、アタック、ライザーに使う |
まずは、矩形波とのこぎり波だけで音を作ります。SUBやNOISEは便利ですが、入れすぎると音の役割がわかりにくくなります。
RANGEとFINE TUNE
RANGEつまみは、OSCILLATORの音域をオクターブ単位で切り替えます。64’から2’まで選べます。8’にした場合、一番下のC、つまりキーボード・パッド2の音が中央Cに相当します。
SHIFTを押しながらRANGEを回すと、FINE TUNEとして±1オクターブの範囲でピッチを変えられます。ほかの楽器と少しピッチをずらしたいときや、厚みを作りたいときに使えます。
最初は次のように考えます。
| 作りたい音 | RANGEの考え方 |
|---|---|
| ベース | 16'から始め、ステップはC2〜C3付近へ |
| リード | 8'から始める |
| 効果音 | 4'または2'から始め、LFOでピッチやFILTERを動かす |
| パッド | 8'から始め、ATTACKを80以上、RELEASEを110以上にする |
FILTERで明るさとクセを作る
S-1のFILTERはロー・パス・フィルターです。低い周波数を通し、高い周波数を切ることで、音をこもらせたり明るくしたりします。
| 操作子 | 変わること |
|---|---|
FREQ | カットオフ周波数。右へ回すほど明るくなる |
RESO | カットオフ付近の強調。右へ回すほどクセが出る |
FILTER LFO | LFOでカットオフを揺らす量 |
FILTER ENV | ENVでカットオフを動かす量 |
最初の練習では、パターンを再生しながらFREQを左から右へゆっくり動かします。明るくなって前に出る位置、こもって奥に下がる位置を耳で確認します。
RESOを上げると、シンセらしい鋭さが出ます。上げすぎると特定の帯域が強調され、音量感も変わるので、最初は少しだけ使います。レゾナンスを最大に近づけると発振状態になるため、音量に注意します。
ENVで音の時間変化を作る
ENVは、鍵盤やシーケンサーでノートが鳴ったときに発生する時間変化の信号です。FILTERやAMPを動かし、一音ごとの立ち上がり、減衰、持続、余韻を作ります。
| 操作子 | 変わること |
|---|---|
ATTACK | 音が立ち上がるまでの時間 |
DECAY | ピークからサステインまで下がる時間 |
SUSTAIN | 押している間の持続レベル |
RELEASE | 離してから消えるまでの時間 |
S-1のENVつまみは、まず0〜255の表示値として考えると操作しやすくなります。短いベースならATTACKを0、DECAYを40〜70、SUSTAINを0〜40、RELEASEを10〜25から始めます。パッド風ならATTACKを80〜130、RELEASEを110〜170へ上げます。
| 作りたい音 | ATTACK | DECAY | SUSTAIN | RELEASE |
|---|---|---|---|---|
| 短いベース | 0 | 55 | 25 | 12 |
| 鋭いリード | 0 | 70 | 210 | 35 |
| 柔らかいパッド | 105 | 150 | 190 | 135 |
| 効果音 | 0〜180 | 0〜255 | 0〜255 | 0〜255 |
ATTACK、DECAY、SUSTAIN、RELEASEがすべて0に近い場合、非常に短いパルス状になり、クリック・ノイズが出ることがあります。音作り上の効果として使うこともできますが、意図しない場合はATTACKを5〜10、またはRELEASEを10〜20へ上げます。
AMPのコントロール・ソース
AMPは音量の変化を作る場所です。SHIFTを押しながらパッドAMPを押すと、AMPをENVでコントロールするか、ゲート信号でコントロールするかを選べます。
SHIFT+ パッドAMPを押します。TEMPO/VALUEで値を選びます。
| 値 | 内容 | 使いどころ |
|---|---|---|
Env | エンベロープで音量を動かす | 通常の音作り |
GAtE | ゲート信号で音量を動かす | ステップ長を素直に反映したいとき |
最初はEnvで十分です。ゲートを使うと、ステップの長さが音量のオン/オフに直接近くなり、シーケンサー的な刻みに向きます。
LFOで揺れを足す
LFOは、ゆっくりした周期の信号でOSCやFILTERを動かします。ビブラート、フィルターの揺れ、ランダムな変化などを作れます。
| 操作子 | 変わること |
|---|---|
LFO RATE | 揺れの速さ |
LFO WAVE FORM | 揺れ方。のこぎり波、逆のこぎり波、三角波、矩形波、RND、NOISE |
OSCILLATOR LFO | LFOでピッチを揺らす量 |
FILTER LFO | LFOでカットオフを揺らす量 |
最初は、WAVE FORMを三角波系、LFO RATEを40前後、FILTER LFOを15前後にします。音色が周期的に明るくなったり暗くなったりする感覚を確認します。揺れが速すぎる場合はRATEを20前後へ下げ、揺れが深すぎる場合はFILTER LFOを8前後へ下げます。
LFO Syncをオンにすると、RATEは4分音符、8分音符、16分音符などテンポに同期した値として扱えます。再生中にRATEを切り替えると演奏とずれることがあるため、その場合は一度停止して再生し直します。
音作りレシピ: 短いベース
T-8のベースとは別に、S-1でシンセ・ベースを作る練習です。
ここからの数値は、公式プリセットではなく、練習用の開始値です。つまみを動かしたときに表示される値を見ながら合わせ、最後に耳で微調整します。
| 操作子 | 開始値 | その値にする理由 |
|---|---|---|
RANGE | 16' | ベースとして低く使いやすい音域から始める |
| 矩形波レベル | 180 | 太さを主成分にする |
| のこぎり波レベル | 50 | 明るさを少しだけ足し、低域が暴れすぎないようにする |
SUB | 90 | 低域を補強する。重すぎるときは60まで下げる |
NOISE | 0 | ベースの輪郭を濁らせない |
FILTER FREQ | 75 | 高域を少し削り、丸いベースにする |
FILTER RESO | 30 | クセを足す。強すぎるときは15まで下げる |
FILTER ENV | 90 | 1音ごとに軽く明るさが動くようにする |
ATTACK | 0 | 鳴り始めを遅らせない |
DECAY | 55 | 短く減衰するベースにする |
SUSTAIN | 25 | 伸びっぱなしにせず、短い音にする |
RELEASE | 12 | ステップの切れ目を残しつつ、クリックを避ける |
| AMP | Env | ADSRで音量を作る |
この状態でC2〜C3付近の短いノートを打ち込みます。音が細い場合は矩形波レベルを210まで上げ、低域が大きすぎる場合はSUBを60前後まで下げます。フィルターがこもりすぎる場合はFREQを90〜110へ上げます。
低域が重すぎる場合は、SUBを下げるか、T-8側のベースを休ませます。S-1とT-8のベースを同時に使う場合は、どちらかを主役に決めます。
音作りレシピ: 鋭いリード
メロディや短いリフに向いた音です。
| 操作子 | 開始値 | その値にする理由 |
|---|---|---|
RANGE | 8' | メロディが埋もれにくい標準的な音域にする |
| 矩形波レベル | 55 | のこぎり波だけでは細いときの芯を足す |
| のこぎり波レベル | 210 | 明るく、前に出る成分を主役にする |
SUB | 0 | 低域を増やさず、リードの音域を整理する |
NOISE | 0 | ピッチ感のあるリードにする |
FILTER FREQ | 190 | 高域を開き、抜けを作る |
FILTER RESO | 65 | フィルターの山を作り、鋭さを出す |
FILTER ENV | 35 | アタックに少しだけ明るさの動きを足す |
ATTACK | 0 | 鍵盤を押した瞬間に鳴らす |
DECAY | 70 | アタック後に少しだけ落ち着かせる |
SUSTAIN | 210 | 押している間の音量と明るさを保つ |
RELEASE | 35 | フレーズの最後を少しだけ残す |
DELAY | 35 | 音を広げる。速いフレーズでは20前後に下げる |
この状態で8分音符や16分音符の短いリフを弾きます。音が刺さりすぎる場合はRESOを40前後へ下げます。前に出ない場合はFREQを220まで上げるか、のこぎり波レベルを230まで上げます。
J-6のコードと重なる場合は、S-1の音域を少し上にするか、J-6のFILTERを閉じて役割を分けます。
音作りレシピ: 柔らかいパッド
S-1は4音まで発音できるので、簡単な和音や広がる音にも使えます。
| 操作子 | 開始値 | その値にする理由 |
|---|---|---|
POLY | PoLy | 4音までの和音を鳴らせるようにする |
RANGE | 8' | 和音が低く濁りすぎない音域から始める |
| 矩形波レベル | 90 | 丸い芯を作る |
| のこぎり波レベル | 115 | 明るさを足しつつ、リードほど前に出さない |
SUB | 25 | 低域を少しだけ補う。濁る場合は0にする |
NOISE | 0 | 和音のピッチ感を保つ |
FILTER FREQ | 115 | 高域を少し丸める |
FILTER RESO | 20 | クセを抑える |
FILTER ENV | 45 | 鳴り始めにわずかな明るさの変化を付ける |
FILTER LFO | 15 | ゆっくりした揺れを少しだけ足す |
ATTACK | 105 | ふわっと立ち上げる |
DECAY | 150 | 音色変化を急に終わらせない |
SUSTAIN | 190 | 和音を押している間、音量を保つ |
RELEASE | 135 | 鍵盤を離したあとも余韻を残す |
REVERB | 80 | 空間を足す。濁る場合は50前後に下げる |
| CHORUS | 1 | 広がりを足す。より揺らしたい場合は4にする |
POLYはSHIFT + パッドPOLYで設定します。単音ベースならNono、厚い単音ならUni、複数音ならPoLy、単音からコードを作りたいならChdが候補になります。
パッドの音が遅れて聞こえすぎる場合はATTACKを70前後まで下げます。和音がこもる場合はFREQを140〜160へ上げます。逆に明るすぎる場合は、のこぎり波レベルを90前後へ下げます。
保存する
音作りがまとまったら保存します。
SHIFT+ パッド16(WRITE)を押します。TEMPO/VALUEでPtnを選びます。- パッド
2(ENTER)を押します。 donEと表示されたら完了です。
次の章では、S-1固有のOSC DRAWとOSC CHOPで、通常波形とは違う音作りに進みます。