第1章 S-1でできること
Roland S-1は、SH系のシンセサイザーらしい音作りと、最大64ステップのシーケンサーを小さな本体にまとめたAIRA Compactシリーズのシンセサイザーです。公式仕様では、最大同時発音数は4音、ユーザー・パターンは64個、エフェクトはDELAY、REVERB、CHORUSを搭載しています。
このサイトでは、S-1を「音を作り、その音をステップ・シーケンサーとモーションで動かす機材」として扱います。T-8がリズムとベース、J-6がコードを担当するなら、S-1はベース、リード、アルペジオ、効果音、動くシンセ・シーケンスを担当できます。
S-1を構成する6つの要素
S-1を理解するときは、次の6つに分けると見通しがよくなります。
| 要素 | 役割 | まず触る操作 |
|---|---|---|
| パターン | 音色とシーケンスをまとめた入れ物 | PATTERNを押しながらパッド1〜4でバンク、パッド1〜16で番号を選ぶ |
| OSCILLATOR | 音の素材を作る | RANGE、矩形波、のこぎり波、SUB、NOISE |
| FILTER | 明るさとクセを作る | FREQ、RESO、LFO、ENV |
| ENV/AMP | 音の立ち上がり、長さ、消え方を作る | ATTACK、DECAY、SUSTAIN、RELEASE、AMP |
| シーケンサー | ノート、ゲート、確率、モーションを記録 | STEP、REC、ステップ・パッド、キーボード・パッド |
| 演奏機能 | ライブ中に変化を付ける | D-MOTION、アルペジオ、ステップ・ループ、RISER |
最初から全部を覚える必要はありません。まずは、パターンを選び、ステップにノートを置き、FREQとDECAYを動かして音が変わることを体で覚えるのが近道です。
パターンは「音色+演奏データ」
S-1では、シーケンサーによる演奏データと、演奏に使う音色を1つにまとめて「パターン」として扱います。パターンはバンク1〜4とナンバー1〜16の組み合わせで、合計64個です。
工場出荷時は、1-01〜1-16がプリセット・パターン、2-01〜4-16が空のパターンです。プリセットも書き換え可能なので、最初の練習ではバンク2以降を使うと安心です。
| 場所 | 用途の例 |
|---|---|
| 2-01 | 最初の練習パターン |
| 2-02 | 同じフレーズの音色違い |
| 2-03 | モーションを入れた展開 |
| 2-04 | ライブ用のブレイク |
| 2-16 | 実験用、OSC DRAW/CHOPの試作 |
SHIFT + パッド16(WRITE)で保存します。音作りは左から右へ考える
S-1の音作りは、信号の流れとして考えるとわかりやすくなります。
- OSCILLATORで、矩形波、のこぎり波、サブ・オシレーター、ノイズを混ぜる
- FILTERで、明るさとレゾナンスを整える
- ENVで、音の立ち上がり、減衰、持続、余韻を決める
- AMPで、音量の動かし方を決める
- EFXで、ディレイ、リバーブ、コーラスを足す
最初に触るなら、FREQが一番変化を感じやすいです。右へ回すと明るく、左へ回すとこもります。次にDECAYを動かすと、短いベース音から長いシンセ音まで変化します。
S-1らしさはOSC DRAW/CHOPとモーション
S-1は基本的なシンセ音だけでなく、OSC DRAWとOSC CHOPで独自の波形を作れます。
| 機能 | できること | 入口 |
|---|---|---|
| OSC DRAW | 16ステップの波高値でオリジナル波形を作る | SHIFT + パッド5(OSC DRAW) |
| OSC CHOP | 波形を16分割して切り刻み、倍音を強調する | SHIFT + パッド6(OSC CHOP) |
| モーション | つまみ操作をパターンに記録する | ステップを押しながらつまみ、または録音中につまみ |
| D-MOTION | 本体の傾きで音色を変える | D-MOTIONを押しながら本体を傾ける |
OSC DRAW/CHOPは個性が強いので、最初は通常の矩形波やのこぎり波で音作りを覚え、あとから足すと違いがわかりやすくなります。
シーケンサーで動きを作る
S-1のステップ・シーケンサーでは、ノートだけでなく、ベロシティー、ゲート、プロバビリティー、サブ・ステップ、モーションを扱えます。
| 項目 | 役割 | 表示例 |
|---|---|---|
| ノート・ナンバー | 音程 | n.C5 |
| ベロシティー | 強さ | v.100 |
| ゲート | 音の長さ | G.80 |
| プロバビリティー | 鳴る確率 | P.100 |
| サブ・ステップ | 1ステップ内の分割 | o--のような表示 |
| モーション | つまみ変化 | FULL表示に注意 |
最初はステップ・パッドでC5のノートを置き、あとからD-MOTIONボタンとTEMPO/VALUEでノート番号を変える流れが簡単です。
まず覚える順番
S-1は機能が多いので、次の順番で触ると全体像をつかみやすくなります。
PATTERNで空きパターンを選ぶSTEPをオン、RECをオフにして、ステップ・パッドにノートを置く- ステップを押しながら
D-MOTIONでノート、ゲート、確率を確認する RANGE、矩形波、のこぎり波、SUBで音の素材を作るFREQ、RESO、ENVで音の明るさを整えるATTACK、DECAY、SUSTAIN、RELEASEで鳴り方を決めるDELAY、REVERB、CHORUSを薄く足すSHIFT+ パッド16(WRITE)で保存する
次の章では、この順番に沿って、最初のシンセ・パターンを1つ作ります。