第1章 J-6でできること
Roland J-6は、コード進行を中心にループを作る小型のコード・シンセサイザーです。単音のシンセとして1音ずつ弾くこともできますが、J-6らしさはCHORD、コード・セット、STYLEフレーズ、64ステップのシーケンサーを組み合わせて、短いコード進行をすばやく曲の骨格にできるところにあります。
公式マニュアル上では、ユーザー・パターンは64個、音色はプリセット・パッチ64種類です。1パターンは8ステップ×8ページで、最大64ステップまで記録できます。ステップ数は多く見えますが、最初はステップ1、3、5、7にコードを置くだけでも十分にループとして成立します。
J-6を構成する5つの考え方
J-6を理解するときは、次の5つに分けると迷いにくくなります。
| 要素 | 役割 | まず触る操作 |
|---|---|---|
| パターン | コード、音色、フレーズ設定をまとめた入れ物 | PATTERNを押し、ステップ1〜8で選ぶ |
| 音色 | コードを鳴らすシンセ音 | SOUNDを押し、ステップ1〜8またはTEMPO/VALUEで選ぶ |
| コード・セット | 鍵盤ボタンに割り当てられたコードのまとまり | SHIFT + CHORDで選ぶ |
| シーケンサー | どのステップでどのコードを鳴らすかを記録 | ステップ1〜8を押し、鍵盤ボタンで入力 |
| STYLEフレーズ | コードをアルペジオやリズム・フレーズに変換 | STYLE ON、STYLE、VARIATIONで選ぶ |
T-8が「リズムとベースをステップに置く機材」だとすると、J-6は「コードをステップに置き、フレーズ化して動かす機材」です。J-6単体でも伴奏パートを作れますし、T-8やS-1と組み合わせると、コード、リズム、メロディの役割分担がしやすくなります。
パターンは8×8で考える
J-6のパターンは、8パターン×8バンクの合計64個です。PATTERNを押すと、ステップ1〜8がパターン番号として働きます。バンクを変えるときは、PATTERNを押しながらステップ1〜8を押します。
たとえば、最初の制作では次のように使うと整理しやすいです。
| 場所 | 用途の例 |
|---|---|
| バンク1-1 | 最初に作るメイン進行 |
| バンク1-2 | 最後のコードだけ変えた展開 |
| バンク1-3 | STYLEフレーズを変えた動きのある進行 |
| バンク1-4 | 音数を減らしたブレイク |
| バンク1-8 | 試作用、ランダム変更やコピー先 |
工場出荷時はパターン1-1〜2-8に演奏データが入っています。最初に本体の雰囲気を知りたいときはそれらを聴き、上書きしたくない場合は別バンクの空きパターンを使います。
SHIFT + 右側の鍵盤C(WRITE)で保存します。コード・セットで「押すだけの和音」を作る
CHORDをオンにすると、鍵盤ボタンを押したときに単音ではなくコードが鳴ります。どの鍵盤にどんなコードが割り当てられるかは、コード・セットで変わります。
コード・セットはSHIFTを押しながらCHORDを押して選びます。ディスプレイにコード・セット番号が表示されたら、TEMPO/VALUEで番号を変え、もう一度CHORDを押して終了します。
たとえばコード・セット1はPop系で、CにCadd9、DにDm7、FにFM9などが割り当てられています。音楽理論に自信がなくても、同じコード・セット内の鍵盤を選ぶだけで、雰囲気のそろったコード進行を作りやすくなります。
ステップにコードを置く
J-6のシーケンサーでは、ステップ1〜8を押して編集位置を選び、鍵盤ボタンでノートやコードを入力します。CHORDがオンのときは、押した鍵盤に対応するコードの構成音がステップに入力されます。すでにデータがある場合は上書きされます。
最初は8ステップのうち、奇数ステップにだけコードを入れるとわかりやすいです。
| ステップ | 操作例 | 役割 |
|---|---|---|
| 1 | ステップ1を押し、鍵盤Cを押す | 進行の始まり |
| 3 | ステップ3を押し、鍵盤Aを押す | 2つ目のコード |
| 5 | ステップ5を押し、鍵盤Fを押す | 展開 |
| 7 | ステップ7を押し、鍵盤Gを押す | 戻りの準備 |
これは本サイトの練習例です。公式マニュアルにこの進行が指定されているわけではありません。最初の目的は、正しいコード進行を覚えることではなく、J-6で「ステップを選び、コードを置き、ループを聴く」感覚をつかむことです。
STYLEでコードを動かす
コードをそのまま鳴らすだけなら、J-6はかなりシンプルなコード・シンセです。ここにSTYLEフレーズを足すと、同じコード進行からアルペジオ、刻み、ストローク風の動きを作れます。
STYLEフレーズを試す基本操作は次の通りです。
- STYLE
ONを押して点灯させます。 CHORDをオンにします。- 鍵盤ボタンを押してコードを鳴らします。
STYLEつまみで大きなタイプを選びます。VARIATIONつまみで細かい違いを選びます。
コードの響きだけを確認したいときは、STYLE ONを消灯させます。コードはよいのに忙しく聞こえるときは、コードを変える前にSTYLEをオフにして、原因がコードなのかフレーズなのかを分けて確認します。
音色とエフェクトで居場所を決める
J-6にはFILTER、ENVELOPE、DELAY、REVERBがあります。コードは音域が広く、ほかの楽器とぶつかりやすいので、音色選びとフィルター調整が大切です。
| 操作子 | 変わること | 最初の使い方 |
|---|---|---|
SOUND | プリセット音色を選ぶ | パターンを再生しながら候補を聴き比べる |
FILTER | カットオフ、明るさ | うるさいときは少し閉じる |
SHIFT + FILTER | レゾナンス | クセを足したいときに少し上げる |
ENVELOPE | リリース | パッド風なら長め、リフ風なら短め |
SHIFT + ENVELOPE | アタック | 立ち上がりを柔らかくする |
DELAY | ディレイ量 | フレーズ感を足す |
REVERB | リバーブ量 | 奥行きを足す |
最初はREVERBを上げすぎないほうが、コードの変わり目を聴き取りやすくなります。T-8と合わせる場合は、J-6の低域を控えめにして、キックとベースの場所を空けるとまとまりやすくなります。
まず覚える順番
J-6はできることが多いので、最初からすべてのメニューを覚える必要はありません。次の順番で触ると、全体像をつかみやすくなります。
PATTERNで空きパターンを選ぶSOUNDで音色を選ぶCHORDをオンにして、コード・セットを選ぶ- ステップ1、3、5、7にコードを入力する
- STYLE
ON、STYLE、VARIATIONで動きを付ける FILTER、ENVELOPE、DELAY、REVERBで響きを整えるSHIFT+ 右側の鍵盤C(WRITE)で保存する
次の章では、この流れに沿って、実際に最初のコード・パターンを1つ作ります。